仏事解説

仏事解説 · 2025/09/12
「お彼岸」とは、春分・秋分を中日とし、その前後3日を合わせた7日間のことをいいます。2025年は、23日が秋分の日となるので、20日〜26日の7日間を「お彼岸」とします。昼と夜の長さがほぼ等しくなるこの時期、季節の変化を通して、古来より人びとは、心の奥底に、「一生の儚さ、そして命の移ろい」を感じ取ってきました。秋分の日を祝日とする日本独特の文化にも、大切にしてきたその歴史をうかがい知れます。 仏教で「彼岸」とは、さとりの世界「お浄土」を表す言葉です。私たちが生きている迷いの世界は「此岸(しがん)」ですから、先に「彼岸」「お浄土」に往かれた亡き人を通して「お浄土の世界にであう」というご縁を「彼岸会」と呼ぶわけです。 浄土真宗では、この期間に特別な修行・供養をすることはありません。先立たれた方をしのぶ心を通して、いのちのつながりをいただきながら、共に仏さまに包まれている身であることを確かめる。その気づきこそに、お彼岸をいただく大切な意味があります。合掌【了】
仏事解説 · 2025/08/16
お内仏に荘厳されるお花のことを「仏花」と申します。四季折々の花は、色も形も香りもそれぞれに異なりながら、やがて散り、枯れてゆく定めを持っています。そのはかなさを嫌うのではなく、むしろ「移ろいゆく命」の姿を花は私たちに示してくれています。だからこそ、仏花は仏さまや亡き人へ差し向ける供養というよりも、私たち人間の命を映す鏡といえるでしょう。真宗大谷派では、特別に豪華な花を求める必要はありません。どんな小さな花、例えば庭に咲くお花でも良いのです。お花の移ろいゆく姿を見、手を合わせることにこそ大事な意味があります。お花の姿を通して、阿弥陀仏の大悲に包まれたこの命の尊さを感じ、同時に「必ず散ってゆく命」であることを忘れずにいたいものです。仏花は、私たちに「今ここに生かされている」事実を静かに告げる仏さま(亡き人)からのメッセージではないでしょうか。合掌【了】
仏事解説 · 2025/08/13
初盆(新盆とも呼びます)とは、故人が亡くなられてから初めて迎えるお盆のことです。お盆はご先祖や亡き人をご縁とした大切な仏縁です。 奈良では、古くからお盆(8月)にお墓参りをする風習が深く根づいており、古都ならではの静けさと温もりの中で大事に勤まります。奈良では「そうめん」や地元の野菜をお備えするご家庭も多いです。 また、お寺の本堂では「盂蘭盆会」という法要が勤まり、多くの方がお焼香に訪れます。 真宗大谷派では、初盆を特別な儀礼として供養するというよりも、お盆そのものを仏法聴聞のご縁として受け止めます。 亡き方は阿弥陀如来の大悲に抱かれて浄土に往生され、そのお心は今、私たちを仏法に導くはたらきとなってくださっています。お盆は、その導きに気づかされる場です。 ですから、真宗大谷派の初盆のお参りでは、「○○さんのために」ではなく、「○○さんに遇(あ)わされて、私が仏法を聞く」ことが根本にあります。 初盆は家族や親族が集まる貴重な機会です。お内仏やお墓の前で、亡き方の歩みやご縁を語り合うことも、大きな意味を持ちます。合掌【了】